第31回
Q. 我が家には5歳の兄弟猫(去勢済み)2匹がいます。マンション住まいなので、生まれてからずっと完全室内飼いです。
この2匹は、つい先日まではとても仲が良く、何をするにも一緒でした。
ところがある日、ベランダに近所の猫が侵入してきて、窓越しに3匹がにらみ合った(うちの2匹はおびえていましたが)事件があり、それから2匹の仲が急激に悪くなってしまったんです。
どちらかが近くを通りかかるだけで威嚇したり、ゴハンの場所も離さないと食事そっちのけでケンカがはじまります。何とか元通 りに仲良く暮らしてほしいのですが…。

A.

何かの原因によって猫の興奮度が高まったときに、その原因とは関係ない対象に攻撃を仕掛けることを“転嫁攻撃性行動”といいます。“転嫁攻撃性行動”とは、人間の世界でいうところの“とばっちり”八つ当たりです。例えば、猫同士が興奮してケンカをしているところに仲裁に入った人が攻撃を受けたり、窓の外の猫に興奮した猫が、近くにいた猫や人を攻撃することです。このような猫の行動を見ると理解しがたいように思えますが、私たち人間も似たようなことはしているはずです。イライラしているときにちょっと不愉快なことをされて、カーッとなって八つ当たりをしてしまったことは誰の経験にもあるはずです。

今回のケースはこの“転嫁攻撃性行動”だと考えられます。ベランダに侵入してきた近所の猫とのにらみ合いが、この問題行動の始まりでしょう。

外の猫とにらみ合って、家の中の猫は当然興奮しました。すぐ近くではもう1匹の兄弟猫も興奮しています。本来は“外の猫VS兄弟猫2匹”の争いの構図だったのが、3四とも興奮していたことで“3匹の争い”の構図もイメージされてしまったと考えられます。

外の猫とは窓越しなので直接喧嘩することなくわかれたことでしょう。兄弟猫の興奮した気持ちは、とりあえず、はけ口を得られないまま落ち着いていったはずです。こうやって落ち着くことで、後に尾を引くことなく終わってしまうのが普通 ですが、今回のケースでは違ったようです。“3匹の争い”のイメージが残ってしまったことで、一方の猫が近くを通 っただけであの日の興奮が甦って、ケンカになってしまうのでしょう。

2匹の争いを止めさせるためには、攻撃行動が起こる状況を避けることが大切です。攻撃行動をくり返していると、猫はその行動が正しい行動であると学習してしまい、問題を解決することが難しくなっていきます。攻撃行動が起こる状況がわかっていれば、それを避けるようにします。食事のときに争いになるのなら、場所を離す必要があります。ベランダに他の猫がやってくるようなら、外が見えないようにカーテンを引きます。爪もこまめに切っておきましょう。

もし争いがおこってしまったら、仲裁は厳禁です。理由は2つ。1つは転嫁攻撃性行動が人にも向かってしまう可能性があるから。もう1つは、仲裁に入る刺激がさらに興奮を高めてしまう可能性があるからです。争いが起こりそうなとき、起こってしまったときには、ケンカ以外に注意を向けさせることが有効です。水鉄砲、笛、コインやネジを入れた缶 などを、家のあちこちに用意します。争いの気配があればこれらを使って猫の気をそらしてください。

争いが減ってくれば次には、2匹を仲良くさせることです。初めて出会う猫同士を飼い始める場合のようにスタートさせると安全でしょう。2匹には距離をおいて生活させます。それぞれのにおいがついたタオルなどを交換し、お互いのにおいに慣らすのもいい方法です。においに慣れたら、興奮しない距離を見計らいながら、食事の位 置を近づけていきましょう。焦らずに距離を縮めていくことが大切です。


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