第45回
Q.

よく猫がゴロゴロとのどを鳴らすのは、機嫌が良いときだと聞きますが、人見知りのウチのコは、知らないお客さんが来たときにゴロゴロするんです。
その人に抱っこされると全身を硬直させ、耳をピタっと伏せ、しっぽをバタつかせながら、しかしゴロゴロとのどを鳴らします。この場合、彼は喜んでいるのでしょうか。
それともゴロゴロとのどを鳴らすのは喜んでいるとき以外にもありうることなのでしょうか。教えてください。


A.

猫が、嬉しいとき、楽しいとき、リラックスしているときにのどをゴロゴロ鳴らすことは、猫好きや猫の飼い主でなくても知っていることです。

では、のどをゴロゴロ鳴らすのは機嫌の良いときだけなのでしょうか。
質問文にあるように、機嫌の良いとき以外に、のどをゴロゴロ鳴らす場面 に出会ったことがある人も多いと思います。
病院で診察台にのせられて緊張している猫が、突然のどをゴロゴロ鳴らし始めることがあります。
緊張したとき、怪我をしたとき、出産、授乳の時にも、さらには死の直前にも、のどをゴロゴロ鳴らすことがあるのです。
満足している猫がのどを鳴らすのはその通りなのですが、満足感だけがのどを鳴らす唯一の条件ではないのです。

満足しているとき以外に、なぜのどを鳴らすのか、そのことについては様々な説があります。
「のどを鳴らすことは友好的なサインで、いたわりを求めたり感謝の気持ちを示すものである」とか、「のどを鳴らすことは人の笑いに該当するもので、つらいときのゴロゴロは苦笑いのようなものである」とか。
最近は、「猫のゴロゴロの周波数が骨折の治癒を早めるので、猫は傷を早く治すためにのどを鳴らすのである」という説も登場してきました。どれも、うなずける部分もあるけれど「ちょっと違うんじゃないの?」というところもあり、十分に納得させてくれるものはないようです。
猫の気持ちや感情を、全部人に当てはめて理解しようということ自体に無理があるのかもしれません。

私は、落ち着いて安心できているときと同じ行動をとることで、いらだったり緊張した気持ちを静めてリラックスしようとする、精神面 での防衛反応である、と考えています。

猫が初めてのどを鳴らす時期は、生後1週齢からです。
母猫の授乳を促すゴロゴロに応えるように始まります。
母猫と子猫の間で交わされる初めての意思疎通行動です。
母猫はのどを鳴らして自分の居場所を教えると同時に、授乳の準備ができたことを知らせます。
子猫はのどを鳴らして、授乳がうまくいっていること、気分が良い状態にあることを母猫に伝えます。
母猫はそれを聞いて安心し、身を横たえ母乳を与えることができるのです。

大人猫同士や、猫から人に向けてのゴロゴロは、母猫と子猫のやりとりが変化したもので、相手に対する親近感や信頼感の表現なのです。

ところで、あの音はどこから出ていると思いますか?
2つの説があり、どちらが正しいのかまだわかっていません。

説1・血液乱流説:大静脈から心臓に向かう血流が増すと乱流が生じ、渦巻く血流が低い音を出し横隔膜がその振動を増幅させる。
説2・仮声帯説:猫には声を出す声帯の他に、仮声帯と呼ばれる1対の喉頭室皺壁(こうとうしつしゅうへき)があり、喉頭筋を収縮させることでここから音を出している。

私個人の意見としては、説2を支持しています。
理由は、
(1)随意運動(意識的に動かすこと)であること。
(2)喉頭室皺壁の存在を説明している。
(3)ゴロゴロの振動はのどが一番強い。
の3つです。
猫についていろいろわかってきている現代の獣医学でも、まだまだわからないことはあるのです。


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