第78回
Q.

12歳になる『トラ』(メス)のことで困っています。1年半前に、生まれた時からずっと一緒に過ごしてきた兄弟猫の『シロ』(オス)を亡くしました。

それから徐々にいつも人のそばについて離れなくなり、最近では1日中ゴハンを要求するようになりました。夜中でも、早朝でも1時間おきに起きてゴハン箱の前に座ってニャンニャン。それで多くやると、全部吐いてしまいます。そのため、今は1日の量は変えずに、3回だったのを7回に増やしているのですが。

どうしたらトラは落ち着いてくれるのでしょうか?


A.

 兄弟猫を亡くした時期と、気になる行動が起こり始めた時期が一致するのなら、その行動には仲間を失ったことが関係していると考えてみる必要があるでしょう。

 しかし、同時に身体的な問題がないかどうかのチェックも行ってください。
特に、“人のそばを離れなくなる”という行動に続いて起こった食欲の亢進は、病気と関係ないかどうかしらべる必要があります。

食欲が増進する病気として、『糖尿病』、『副腎皮質機能亢進症』、『甲状腺機能亢進症』、『慢性膵炎』などがあります。潜在的にあった疾患が、兄弟を亡くしたストレスで現れてきた可能性も考えられます。

食べることから他へ関心をそらす工夫を

 身体的な問題がない場合の食欲亢進や過食は、精神的な原因が関係していることがあります。『心因性過食症(心因性多食症)』などが始まった時期が、猫の生活の中で起こった緊張度の高い出来事や環境の変化と一致することがあります。

家族構成が変わった、新しいペットが増えた、引っ越しやリフォームなどによる環境の変化、入院やペットホテルから戻った後、とてもいやな経験をした後、など、不安や緊張を経験すると、突然食欲が増すことがあります。

 猫の精神的ストレスを人が理解して同情している場合、食欲の増加をよい兆候と捉えることがあります。「よく食べるね」などとほめる、もう一杯を与える、食事するところを眺める、などと猫の食事に関心を向けると過食がエスカレートしたり定着してしまいます。

放っておけば一過性に解決されたかもしれない問題を、人が深刻にしてしまうこともあるのです。原因を取り除けるのなら取り除くことが1番の解決ですが、今回のような場合にはそうはいきません。

遊びなど他の活動を利用して、食べることから関心をそらす工夫が必要です。

脳内麻薬の分泌が過食に関係!?

 また、食事そのものがストレス解消や精神安定剤のような役割をしていることもあります。おいしいと感じる食べ物を摂取した後に、“β-エンドルフィン”という脳内麻薬が大量に出るという報告があります。β-エンドルフィンは脳内麻薬や快感物質とも呼ばれる物質で、運動時に分泌が増加し、運動による苦しみや痛みなどを忘れさせる働きがあります。

仕事や遊びで、つらくても集中しているうちに楽しくなって没頭してしまうのもこのβ-エンドルフィンが関わっていると言われています。β-エンドルフィン分泌は、快い気持ちと幸福感をもたらし、疲れを忘れさせると共に回復ももたらすようです。

 トラちゃんの食事が、β-エンドルフィンの分泌を促すスイッチなら、食事の要求は空腹感によるものではなくβ-エンドルフィンによる快感を求めてということになります。この快感誘導が続くと、食事を食べられると思っただけでβ-エンドルフィンの分泌が準備されるようになり、食事をがまんすることが難しくなっていきます。

おいしさの3大要素は、脂質、甘味、アミノ酸(出汁)といわれています。塩分のない出汁を食事の代わりに与えてみてください。

 それがうまくいったら量と回数を減らしていきましょう。同時に抗不安薬を使ってみるのもいい方法だと思います。


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