第84回
Q.

『福』(メス・2歳)は、生まれてすぐに野良の母猫がどこかにいってしまい、私が保護して人工哺乳で育てたコです。無事育った後も、私は一日中福と−緒に過ごしてきました。

不憫な生い立ちで、甘やかし過ぎたとは思います。3カ月前に私は仕事を始め、福は留守番に。すると福は一日中鳴いていたり、玄関のドアの前にいたりで、やせ始めてしまいました。

寂しくないように同居猫を増やそうかと思いますが、人の手で育てたコでも、新入り猫を受け入れてくれるでしょうか?


A.

 子猫の時から飼っている場合、猫は飼い主との関係を、子猫と母親の関係に近いものとして感じています。飼い主と一対一の場合、この傾向はさらに強まります。食事や安全な環境、そして愛情を提供してくれる飼い主はすばらしい保護者です。このような保護者がいれば、猫は自立する必要もなく、ずっと子猫のままでいることができます。これは飼い主も無意識に望んでいることでもあります。

 このような猫は、飼い主の姿が見えないと、母猫を探し求めるようにせつなく鳴きます。人恋しく鳴く様子を見て、「寂しい思いをさせてしまっている」と心を痛めてしまうのは当然の感情です。そこで思いつくのは、「ひとりは不憫なので、友達を連れてきてあげよう」というプランです。

仲間により依存度軽減

 しかし、猫が鳴いている理由は、綱い主(母親)を恋しがっているのであって、ひとりを寂しがっているからではないことは理解しておかなければなりません。全ての猫が、他の猫と一緒に暮らしたいと思っているわけではありません。単独生活者の猫にとって、仲間がいないことは犬や人ほどつらくはありません。猫の仲間がいないと寂しくていられないコもいる一方で、他の猫とは一緒に暮らしたくないと思っているコもいます。そして複数飼いの猫の大半は、特に仲良しになるわけでも嫌うわけでもなく、適度な距離を保ちつつ、共存していきます。

『福』ちゃんのような猫に対して、新しい猫を増やすことにはリスクはあります。しかし、成功すれば、それは福ちゃんにとってもストレスの軽減につながるので、チャレンジする価値はあると思います。

 今は関係を築く相手が飼い主しかいませんが、新しい猫が増えることで、そちらとの関係も築かれるようになります。そのことで飼い主への依存度が少しでも軽くなれば、後追いの頻度も減ってくることが期待できます。それがさらに発展すれば、自立心が芽生え、大人の猫として親(飼い主)離れができるかもしれません。

複数飼いへのステップ

 新しい猫を福ちゃんに上手に紹介できれば、成功の確率は高くなlります。
 注意点は5つです。

(1)子猫:幼い子猫のほうが先住猫が受け入れやすくなります。理想は3カ月齢。大きくても6カ月齢まで。

(2)性別はメス:一般的に、オスよりもメスのほうがテリトリー主張が弱いので、争いが生じる確率が低くなります。

(3)接触の制限:新しい猫をいきなり自由にさせるのではなく、ケージに入れた状態で対面 させましょう。自分の決めた距離で会うことができると、新しい猫に悪い印象を持つことなく慣れることができます。

(4)先住猫への配慮:どうしても新しいコのほうに目が行きがちになるので、意識的に先住猫を優先させます。

(5)テリトリーの確保:自分だけの安全な居場所が確保されていると、時間と共に新しい猫の存在を受け入れる余裕ができます。

 多くの場合、新しい猫は決して友達ではなく、テリトリーヘの侵入者です。最初から仲良く出来ない方が当たり前で、“フーッ!”と威噸したり、毛を逆立てたりするのは普通 のことです。時間をかけてゆっくりとなじませていくことが大切です。


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