第88回
Q.

 9カ月になった『ジェイムズ』(オス)に、去勢手術を受けさせました。手術をして、病院から帰宅した後のジェイムズは、部屋の隅でしばらくじっとした後、私のひざの上で、まるで叱られた子供が泣いているかのように静かでした。

去勢前はかなりやんちゃで、いつも部屋を走り回っていたのに・・・。

 猫にも“去勢”の意味が分かって、落ち込んでいるのでしょうか? 今後、また元のように元気になってくれるでしょうか?


A.

 猫が病気やケガをした場合や、旅行などの様々な事情が起こった場合には、猫を動物病院やペットホテルに預けなくてはならなくなります。

多くは環境に順応する

 病院やペットホテルに預けられた猫は、いつもの慣れた場所から、まったく知らない場所で過ごさなくてはなりません。また、飼い主からも引き離され、よく知らない人によって世話をされることになります。生活が大きく変化したことで、睡眠のパターンは崩れ、運動も制限されるでしょう。

 さらに、食事も変わってしまうかもしれません。

 その上、治療や手術のために入院したのであれば、その痛みやダメージから回復しなければなりません。

 多くの猫は、飼い主が考えているよりはずっと環境に順応できるので、滞在先でも、精神的にも身体的にも問題なく過ごすようになります。

 しかし、飼い主から引き離されて制限された場所に入れられると、不安やストレスから、ちょっと抑うつ気味になったり、興奮したり、攻撃的になる猫もいます。

帰宅後の変化パターン

 ほとんどの猫は、預けられていたペットホテルや入院していた病院から家に帰ってきても、すぐに家を出る前とあまり変わらない様子で過ごし始めます。

 けれども、中には預ける前と様子が違ってしまう猫もいます。預けられている間に精神状態が安定した猫は、家に帰ってからも特に変わりなく元の生活を再開します。しかし、半日〜1日程度の短期の入院やホテル滞在で、そこで精神的に安定する前に家に戻った場合には、戸惑いなどから落ち着かない様子を見せることがあります。

 また、長期の入院やホテル滞在の場合、滞在先にしっかり順応していると、家に帰ったときに再度順応しなくてはならないことがあり、精神的に不安定な態度を示すことがあります。

 不安定な態度のパターンとしては、
(1)落ち着かずに、家中を調べて回る
(2)落ち込んだように活動性が低下する
(3)ちょっとしたことで争いが起こる(他に同居猫がいる場合)
 の3つが多いようです。

抑うつ状態の症状

『ジエイムズ』君の場合、パターン(2)が当てはまると思います。

 猫の落ち込み(抑うつ状態)は、人と同じように現れます。
・食欲不振
・不眠や浅い眠り
・グルーミングの減少
・運動量の低下
・遊びへの意欲の低下
・スキンシップに消極的
 などです。

 たいていの場合、この行動は長くは続かず、早ければ数時間、遅くても数日でおさまるので、問題が残ることはほとんどありません。

 ジエイムズ君も、時間とともに元に戻ってくると思いますが、退院後2日を過ぎても抑うつ状態が続くようなら、獣医師に相談しましょう。精神安定フェロモンや抗不安薬を利用すると、回復が早いかもしれません。 普段通りに接しよう 「去勢の意味を感じて精神的に落ち込んでいるのでは?」と思うのは考え過ぎですが、感じやすい猫の場合、家の人たちの対応は重要です。

 過度に同情すると、そのいたわりを維持するために、調子が悪い態度を取るようになることがあります。また、去勢したことを椰捻したり、笑いの対象にすると、それだけでもかなり落ち込むことがあります。努めて普段通 りに接して下さい。


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