〜 ワンちゃんの認知症 認知障害症候群 〜
【 診断・予防と治療 編 】
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診断
人の認知症の診断にはさまざまな診断基準があり、一つの方法で確定できるものではありませんが、その中に質問に答えて合計点数を出し、症状の偏りや傾向を数値化するテストがあります。

ワンちゃんの認知症でも同じように、点数を出して診断する方式のチェックリストがあり、診断基準として利用できます。

この診断シートは、私も大学で教えていただいた内野富弥先生が作成されたもので、私の病院でも使わせていただいてます。

ワンちゃんの認知症の診断基準100点法

総合得点が   
 30点以下   老犬
 31点〜49点 認知症予備犬
 50点以上   認知症

「犬の認知症の診断基準100点法」で、認知症の可能性が疑われたら、かかりつけの動物病院を受診してください。

「犬の認知症の診断基準100点法」で点数が高くても、それだけで認知症と診断されるわけではなく、他の病気の可能性も考えられます。
認知症は早期治療が大切で、そのままにしておくと、症状は進行してしまいます。

認知症の進行を遅らせるためにも、早めに治療を始めてあげてください。


予防と治療
認知症は、脳細胞の変性や死滅によって発症するので、今の医学ではまだ治療法が確立されていません。
だからといって、何も治療をしないで放っておくと進行して、症状もより深刻になっていきます。

認知症を発症する前に、認知症の軽いうちに、生活習慣や食事などの対策を講じると、発症を防いだり進行を遅らせることが可能だといわれています。

これらの方法は、発症や進行を予防する方法であると同時に、症状の緩和や軽減ももたらしてくれるので、広い意味で治療法と言えるかもしれません。


1.ワンちゃんの脳に刺激を与える

2.食事/食品

3.サプリメント

4.漢方薬


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1.ワンちゃんの脳に刺激を与える

老齢に達した脳でも、新たな経験や問題解決などの適切な刺激を与えると、脳内の神経接続が増えることがわかってきました。
人でも、認知症を予防したり進行を遅らせるためには刺激がとても大切であるといわれています。

ワンちゃんの脳に刺激を与える方法

1)散歩
毎日の散歩や外出は好奇心を刺激させることができ、歩行機能の維持にも役立ちます。

また、時々、コースに変化をつけてみましょう。いつもとは違う景色、初めての臭い、聞きなれない音など、ワンちゃんにとって新たな刺激とたくさん出会えると思います。

散歩の途中に公園などがあれば、そこで簡単な遊びをしたり、簡単なしつけ(待て、お座り、ふせなど)の復習を取り入れるのも良い方法です。

2)知育玩具を与える
ワンちゃん用の知育玩具とは、簡単に言うと「中に食べ物が入れられるおもちゃ」です。
ワンちゃんは、中に入っている食べ物を食べたい一心で、かじったり、振り回したり、音を聞いたり、いろいろな行動や感覚を使うことになります。

ワンちゃんが飽きてきたり、簡単に取り出せるようになったら次のおもちゃを用意してあげましょう。

3)ワンちゃんと出かける
ワンちゃんを連れて、いつもと違うところに出かけてみましょう。
少し離れた場所でも、日帰りドライブでも、外泊旅行でも、日頃と違う体験はワンちゃんの脳に刺激を与えます。

また、これらの体験で喜んでいる飼い主さんを見せることも大切です。
飼い主さんが喜んでいるのを感じることは、ワンちゃんににとってさらなるよい刺激となります。

4)マッサージ、スキンシップ
マッサージやブラッシング、手ぐしなど、スキンシップの時間を充分にとりましょう。

スキンシップがワンちゃんの脳に直接刺激を与えるわけではありませんが、皮膚刺激を通して脳の機能を活性化してくれます。

また、触れ合うことで、触れられた側と触れた側どちらにもオキシトシンが分泌され、脳内のセロトニン神経を活性化します。

セロトニン神経は脳の状態を安定させ、自律神経にも働きかけ、脳全体を安らかな、落ち着いた状態にしてくれます。

オキシトシンは、幸福ホルモンともいわれることもあるホルモンで、幸福感に包まれ、心の状態も安定して、気持ちよくリラックスした状態にしてくれます。



2.食事/食品

成分が強化されたフード
高齢期のワンちゃんに向けてさまざまに工夫がされたフードが増えてきています。
その中には、認知症予防を目的とした食事もあります。
一般の食事と比べると価格は高めですが、予防効果は期待できます。
食事の選択に迷ったら、かかりつけの動物病院に相談してください。

成分を含む食材
食材には、認知症予防に役立つ成分を多く含んだものがあります。
このような食材を食事に混ぜて与えたり、おやつとして与える方法もあります。

ただし、与える前に必ずその食材がワンちゃんに問題なく与えられるものかどうか、獣医師に確認してください。また、与える量もいっしょに相談しましょう。

認知症予防に役立つ成分

オメガ3脂肪酸
不飽和脂肪酸の一つで、DHAやEPAはその仲間です。
オメガ3脂肪酸は、その効果が幅広いため、認知症予防以外にも、血流改善やコレステロール値の低下、アレルギー抑制などの目的でも注目されています。

DHA:神経細胞を修復し、残った神経細胞の働きをサポートします
EPA:イライラを緩和させ情緒を安定させます。
DHAと共にアルツハイマー型認知症を改善する働きがあると期待されていま
す。

抗酸化物質
抗酸化物質は、人のアルツハイマー型認知症の進行を予防する効果があることがわかってきています。
アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβというたんぱく質がたまり、脳萎縮が起こることが原因ですが、抗酸化物質を豊富に含んだ特別食を与えると、脳内のアミロイドの生成が抑制されるということが実験で証明されてきています。

アミロイドβの生成が抑制されれば、アルツハイマー型認知症の発症を予防できる可能性が出てきました。

ポリフェノール:光合成によってできる植物の色素や苦味の成分で、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きを持っています。

・アントシアニン(ベリー類、しそ、など)
・セサミン(ごま)
・カテキン(緑茶)  その他、たくさんあります。

カロチノイド:食品に含まれる緑、赤、黄色などの色素に含まれる成分です。
植物だけでなくカニやエビなどの甲殻類や鮭などにも含まれています。

・緑黄色野菜(β-カロテン、リコピン、ルテインなど)
・エビ、カニ、鮭など(アスタキサンチン)

抗酸化ビタミン:活性酸素の働きを抑える作用を持つビタミンのことで、ビタミンA・ ビタミンC・ビタミンEなどが代表的です。



3.サプリメント

認知症予防に役立つ成分をサプリメントとして摂取する方法もあります。
サプリメントも、食材と同様に、与える前に必ずそのサプリメントがワンちゃんに問題なく与えられるものかどうか、獣医師に確認してください。

利点 
・フードの選択肢が広がる
・必要量を充分に与えることができる
・ワンちゃんの食欲に影響されない
・手に入りにくい成分も与えられる
・食材以外に含まれる成分も摂取できる
 お茶の葉、樹皮、などに含まれる成分

欠点 
・継続しないと効果が得られないので長期的に費用が必要になる



4.漢方薬

認知症は、中医学的弁証(西洋医学の診断)では、肝脾腎虚、痰?阻竅です。
治則(導かれた証に対して実際に治療を行う上でのルール)は、
補気養心、益肺固腎、活血化お、益気生津、養心降脂になります。

中医学的弁証
肝脾腎虚  肝、脾、腎、3つの精気が不足している病症
 肝虚 消化器系など全般の機能低下によりおこる症状
 腎虚 内分泌系や免疫機能など全般の機能低下によりおこる症状
 脾虚 消化器系や循環器系など全般の機能低下によりおこる症状
痰お阻竅 運化機能が弱くなり、痰湿が生じる。

清気がその痰湿に阻害されお滞し、脳竅(のうきょう:脳内の細い穴)に届かなくなる。

治則
 補気養心
  補気 気を補充する。体の細胞を元気づける働き
  養心 心を養い、血を全身に循環させる
 益肺固腎 肺虚、腎虚を改善し、生命力・抵抗力を強める
 活血化お 血の流れを良くし、お血を解消する
 益気生津 気を養い元気を強め、体が正常な水分を産生できるように整える。
 養心降脂 血を全身に循環させ、体内の痰湿、脂肪を取り除く

処方  
ワンちゃんの状態と治則から、その子に合った処方の漢方薬を選択します。



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