〜 ワンちゃんの認知症 認知障害症候群 〜
【 原因・症状 編 】
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近年、フードの品質向上、飼育環境の改善、獣医学の進歩などにより、ワンちゃんも驚くほど長生きするようになりました。
高齢期が長くなると共に、歳をとることによるさまざまな問題も増えてきています。
その中に認知症の問題があります。

ワンちゃんも歳をとると、しぐさの変化が少しずつ見られるようになります。
歩き方がゆっくりになったり動きが鈍くなったり、視覚や聴覚などが鈍ってきたりといった変化はほとんどの高齢のワンちゃんで認められます。
しかし、

   感情表現が失われたり突然怒り出す
   今までできていた習慣や約束事ができなくなる

など、機能の衰え以外の症状がみられることがあります。
これらは脳の障害による症状で、人と同じように認知症と診断されます。

認知症の症状には様々なものがあり、それぞれのワンちゃんによって現れ方は異なります。

いくつかの症状が伴って現れることもありますが、多くの場合は、1つの症状がゆっくりと現れ始め、次に別の症状が現れる、というように段階的に進んでいきます。

つまり、症状すべてが一気に現れるのではなく、個々の症状が1つ、2つとゆっくり現れます。


原因
認知症はいまだに不明なことが多い病気ですが、認知症のワンちゃんの脳には、人のアルツハイマー型認知症と類似した病変が認められることがわかってきました。

アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβというたんぱく質がたまることで、正常な神経細胞が壊れ、脳萎縮が起こることが原因と言われています。

ストレスも神経細胞を障害する酸化物質を蓄積しやすくするため、認知症の発症リスクを高めます。

症状
認知症の症状の捉え方は、
@見当識障害(Disorientation)
A相互作用の変化(Interaction)
B覚醒/睡眠周期の変化(Sleep-wake cycle)
C不適切な排泄(House soiling)
D活動性の変化(Activity)
に分類されます。

それぞれの頭文字を取ってDISHA(ディーシャ)と呼び、認知症の症状を確認、診断する時にはこれに基づいたチェックリストが用いられます。


@見当識障害(Disorientation)

A社会的相互作用の変化(Interaction)

B覚醒/睡眠サイクルの変化(Sleep-wake cycle)

C不適切な排泄(House soiling)

D活動性の変化(Activity)


ライン


@見当識障害(Disorientation)

空間認知の変化、周囲の環境に対する把握不全、経験の混乱などがみられます。

人では、時間や季節がわからなくなる、今いる場所がわからなくなる、知り合いの人がわからなくなるといった、自分が置かれている状況がわからなくなるなどの症状が現れます。

ワンちゃんでは、具体的には次のような症状が見られます。

・散歩コースがわからなくなる/家の近くで迷子になる
・家の中で間違ったドアに進む
・室内で迷子になる
・よく知っている人や動物を認識できない
・落ち着きがなく家の中で歩き回る
・壁に向かってボーっとしている
・障害物を避けることができず立ち往生する
・狭い所に入り込んだら後退できない
・よく知っているものに異常な反応を示す
・食事の時間や場所がわからない



A社会的相互作用の変化(Interaction)

飼い主や一緒に暮らす動物など、よく知っている人や他のワンちゃん、動物との関わり方が変化する症状です。

また、学習したはずの指示に対する反応の低下などもみられます。

ワンちゃんでは、具体的には次のような症状が見られます。

・飼い主のもとに来なくなる(呼びかけに反応しない)
・撫でられても無反応/反応が乏しい
・飼い主と遊ばなくなる/遊んでもすぐに興味を失う
・おもちゃで遊ばなくなる/遊んでもすぐに興味を失う
・他のワンちゃんと遊ばなくなる/遊んでもすぐに興味を失う
・指示に対する反応の低下
・飼い主に異常につきまとう/過剰に甘えるようになる
・ちょっとしたことで怒り出す
・同居しているワンちゃんへの攻撃性
・屋外で出会ったワンちゃん/知らないワンちゃんへの攻撃性
・物音や接触などの刺激に敏感になる



B覚醒/睡眠サイクルの変化(Sleep-wake cycle)

昼間の睡眠時間が増えて夜の睡眠時間が減ったり、睡眠のパターンが安定しないなどの症状が現れます。

ワンちゃんでは、具体的には次のような症状が見られます。

・昼間の睡眠時間が延びる
・夜、寝る時間になっても寝ようとしない
・不眠と過眠を繰り返す
・夜になると落ち着かなくなり、徘徊する
・遠吠えをする



C不適切な排泄(House soiling)

これまでできていた排泄の決まり事ができなくなり粗相するようになります。
あるいは突然お漏らしをするなどの症状が見られるようになります。
*排泄の失敗という症状は認知症だけでなく、他にもいろいろな原因が考えられます。

泌尿器や消化器の疾患も疑ってみてください。

ワンちゃんでは、具体的には次のような症状が見られます。

・トイレ以外の場所や飼い主が見ている前で排泄する
・睡眠場所/食事場所で排泄する
・排泄の前兆(トイレサイン)が見られなくなる
・排泄場所を自分で変える
・突然おしっこを漏らす



D活動性の変化(Activity)

目的を持った活動の低下と無目的な活動の増加がみられます。
無目的な活動として多彩な症状が現れます。

ワンちゃんでは、具体的には次のような症状が見られます。

・においを嗅ぐ行動や音や物への反応が見られなくなる
・食べ物や水を探し当てられない
・何もない場所を見つめたり、噛み付いたりする
・人や物を異常に舐め続ける
・目的もなく歩き回る:徘徊
・円を描くように旋回して歩き続ける
・無駄吠えが増える
・極端な食欲の増加
・食欲の低下



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